d_739905 媚薬墨汁2・俺をバカにした腹黒書道部長を雌犬堕ちさせたので、次は生意気後輩をロックオンします
書に縛られ、闇に従う。
これは盲目的な恋か、それとも支配の残り香か。
書道部部長・硯村雫(すずりむらしずく)の表の顔は、今日も完璧だった。
乱れのない筆運び。
後輩への優しく的確な指導。
誰もが憧れる、揺るぎない優等生。
――だが、黒墨(くろずみ)の言葉ひとつで、その日常は容易く崩壊する。
知ってしまったのだ。
あの圧倒的な墨の力を。
彼の書に触れたあの日から、雫の奥底には消えない熱がべっとりと張り付いている。
これは呪いか。
それとも甘美な堕落か。
罪悪感という鎖に縛られながらも、嫉妬という蜜をすすり、彼への執着はどこまでも深く沈んでいく。
ポケットのスマホが震えた。
『体育倉庫へ』
もうすぐ次の授業が始まる。
無視しなければならない。
なのに、気づけば足は薄暗い廊下を進んでいた。
軋む重い扉の先は、埃の匂いが充満する閉鎖空間。
積まれたマットの影に身を潜めると、自身の痛いほどの鼓動が耳を打つ。
扉一枚隔てた外の世界は、まばゆい光に満ちていた。
体育の授業中なのだろう、後輩・筆崎(ふでさき)エミの明るい歓声が響いてくる。
わずかに開いた倉庫の扉から、一筋の光が差し込む。
だが、その光は決して雫を照らさない。
私は被害者だったはずだ。
なのに、もうすぐ加害者へと堕ちる。
それでも彼の言葉が欲しい。
この狂気を肯定する言い訳が欲しい。
差し込む一筋の光は、暗がりに潜む黒墨の冷たい横顔だけを、残酷なほど白く浮かび上がらせていた。
彼の計画は、いつだって完璧だ。
外で弾けるエミの笑い声が、ひときわ大きく響く。
扉一枚を隔てて――光は無邪気に躍り、闇はただ静かに従っていた。
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