b182asnw01245 愛の手(単話)
その少女が手にしている数百円が募金箱の中に吸い込まれた時、ボランティアの青年は違和感を覚えた。〈世界中の恵まれない子ども達に愛の手を〉というキャッチコピーが示す今回のチャリティーは、文字通り、貧困にあえぎ、まっとうな教育を受けられない途上国の子供たちへの支援活動であるのだが、目の前の少女は、顔は傷だらけで目もうつろ、今しがた募金箱に放った小銭も、なけなしのお金に違いないと思わせるような印象を持たせる彼女に、青年は「君にこそ支援が必要ではないのかい?」という言葉を胸にしまいこむように、ただ、ありがとうございましたという定型文で、踵を返す少女の背中を見送るしかなかった。
帰宅して、義父に傷だらけの顔を殴られる少女。
今しがた募金した小銭は義父の弁当代で、その暴力行為は、弁当もお金も持たず帰ってきた少女に激怒した義父の一発であったのだが、その後も、二発三発と、無慈悲な制裁は収まることを知らず、さらには……!?
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